11月に読んだ本から
2012/12/11 Tue Filed in: 読んだ本
・五味 康祐 著「如月剣士」(上・下)・「柳生天狗党」(上・下)(電子書籍版・徳間文庫)



電子書籍のレビューは初めて。とにかく、五味の本が読みたくてiPad miniを買い、電子書籍を購入したといっても過言ではない。絶版本がもっと読めるようなビジネスモデルが現れて欲しいものだ。
ともにhontoという、首都圏にある大型書店などがつくっているウェブストアで買い求める。1冊は600円弱。古本で集めるよりもおそらく安いだろうし、汚れなどもないのでありがたい。途中で読むのを止めても次にビューアーを立ち上げたときにそのページが表示されるし、しおりもつけられる。
で、内容だが、先月の「薄桜記」と同じく隻腕の剣士(高田左近と檜垣冴之介)が登場するところが興味深い。2作とも、である。相当五味康祐はこの隻腕剣士が好みだったに相違ない。
両作とも、「陰謀」がテーマであり、初めはまったくその陰謀の筋書きが見えてこない。謎なまま読み進めていくと徐々にその輪郭がおぼろげに見えてくる。登場人物も実在の人物、架空の人物が入り乱れ、場面の転換や登場人物の移動が多く、人物相関図を頭に描きながら読み進めていくうち、読者が心情を寄せる登場人物が定まっていく寸法になっている。エンタテインメントとしてはレベルが高く、「柳生武藝帳」が未完なのに対してちゃんとストーリーが完結している。
未完の「柳生武藝帳」よりもこちらの方が五味の最高傑作、という人もいるのはわかる気がする(私個人はいまだ「柳生武藝帳」の方が好き)。ただ、読み進めると時々頭をひねりたくなるような展開やディテールの疑問が湧く。「柳生天狗党」のラストはダークサイドのドン・柳生の冷酷非情を浮き彫りにするが、ちょっと話が飛びすぎな感じがするし、刀を置いて入らなければならない吉原で派手な刃傷沙汰が起こるのもどうかと思う。
「柳生武藝帳」のための助走と見ればいいかもしれない。
・光森 忠勝 著「カリスマサイクリスト 鳴嶋英雄の自転車の楽しみ方」(電子書籍版・朝日新聞出版)

最近刊なので、電子書籍版でも1100円した。「なるしまフレンド」というのは東京でも有名なロード中心のサイクルショップで、そこのオーナーが鳴嶋英雄である。ショップが先なのかサイクリングクラブが先なのか、ショップがクラブを支える手段と読めるが、両輪として成り立っているようだ。毎年八ケ岳までクラブ員を引き連れてツーリングが催されるらしい。なかなかタフなツーリングである。
この月は、電子書籍が読めるのが嬉しくて、無料の青空文庫(著作権切れの古典をボランティア精神でアップロードしている)にアクセスし、永井荷風の短編なども読んでみた。有名な「濹東綺譚」も読んでみたが、なるほど「奇譚」であった。




電子書籍のレビューは初めて。とにかく、五味の本が読みたくてiPad miniを買い、電子書籍を購入したといっても過言ではない。絶版本がもっと読めるようなビジネスモデルが現れて欲しいものだ。
ともにhontoという、首都圏にある大型書店などがつくっているウェブストアで買い求める。1冊は600円弱。古本で集めるよりもおそらく安いだろうし、汚れなどもないのでありがたい。途中で読むのを止めても次にビューアーを立ち上げたときにそのページが表示されるし、しおりもつけられる。
で、内容だが、先月の「薄桜記」と同じく隻腕の剣士(高田左近と檜垣冴之介)が登場するところが興味深い。2作とも、である。相当五味康祐はこの隻腕剣士が好みだったに相違ない。
両作とも、「陰謀」がテーマであり、初めはまったくその陰謀の筋書きが見えてこない。謎なまま読み進めていくと徐々にその輪郭がおぼろげに見えてくる。登場人物も実在の人物、架空の人物が入り乱れ、場面の転換や登場人物の移動が多く、人物相関図を頭に描きながら読み進めていくうち、読者が心情を寄せる登場人物が定まっていく寸法になっている。エンタテインメントとしてはレベルが高く、「柳生武藝帳」が未完なのに対してちゃんとストーリーが完結している。
未完の「柳生武藝帳」よりもこちらの方が五味の最高傑作、という人もいるのはわかる気がする(私個人はいまだ「柳生武藝帳」の方が好き)。ただ、読み進めると時々頭をひねりたくなるような展開やディテールの疑問が湧く。「柳生天狗党」のラストはダークサイドのドン・柳生の冷酷非情を浮き彫りにするが、ちょっと話が飛びすぎな感じがするし、刀を置いて入らなければならない吉原で派手な刃傷沙汰が起こるのもどうかと思う。
「柳生武藝帳」のための助走と見ればいいかもしれない。
・光森 忠勝 著「カリスマサイクリスト 鳴嶋英雄の自転車の楽しみ方」(電子書籍版・朝日新聞出版)

最近刊なので、電子書籍版でも1100円した。「なるしまフレンド」というのは東京でも有名なロード中心のサイクルショップで、そこのオーナーが鳴嶋英雄である。ショップが先なのかサイクリングクラブが先なのか、ショップがクラブを支える手段と読めるが、両輪として成り立っているようだ。毎年八ケ岳までクラブ員を引き連れてツーリングが催されるらしい。なかなかタフなツーリングである。
この月は、電子書籍が読めるのが嬉しくて、無料の青空文庫(著作権切れの古典をボランティア精神でアップロードしている)にアクセスし、永井荷風の短編なども読んでみた。有名な「濹東綺譚」も読んでみたが、なるほど「奇譚」であった。